1. はじめに
企業の人事担当者にとって、休職率の増加 は組織運営に大きな影響を与えます。
近年、育児休業や病気休職を含む無給休暇の取得率が増えており、これを適切に分析し対応することが求められています。
私は、給与計算時に無給者の増加に気づいたことをきっかけに Tableauを活用して休職率の分析を行いました。
その結果、最近の育休取得率が増加傾向にあることが明らかになりました。
本記事では、休職率の分析手法と、HRデータを活用した戦略的な改善策 について解説します。
2. データ分析の流れ
2-1. 勤怠データの整理
日次の勤怠データ には、各従業員の出勤・休暇情報が記録されています。
休暇の項目は日次データを累積するほうが実態と合うため、日次データをもとに分析を行います。
休暇の種類には以下のようなものがあります。
- 育児休業(長期)
- 産前産後休業(短期間)
- 私傷病休職(病気やケガによる長期休職)
- 介護休暇(家族の介護のため)
- その他の無給休暇(特別休暇や長期欠勤)
このデータは日次データであるためデータ数が多く、Tableau Prep を使って前処理することで効率的に処理し、月次の休職データとして集計します。
2-2. 休職率の計算方法
休職率は以下の計算式で求めます。
休職率 (%) = 休職者数 ÷ 総従業員数 × 100
この計算方法が一般的に採用されている理由は、シンプルで直感的に理解しやすく、企業間・業界間での比較が容易であるためです。
また、厚生労働省をはじめとする公的機関でも類似の指標を用いており、統一された基準で休職率を評価することが可能になります。
この指標を活用することで、組織の健康状態や労働環境を客観的に把握し、適切な人事施策の立案に役立てることができます。
Tableauでは、無給休暇の従業員をフィルタリングし、毎月の休職率を可視化するダッシュボードを作成できます。
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チャットGPTで、日次データサンプルを作成して、Tableauで可視化してみました。
あまり現実的なグラフではないものの、折れ線で休暇ごとに色付けをすれば、見やすいです。
3. データからわかったこと
3-1. 休職率の増加要因
Tableauで可視化した結果、こんなことが分かりました。
給与計算時に「無給者が多い」という傾向に気づいたのが分析のきっかけでした。
データを掘り下げた結果、最近の育休取得率の増加が主要因である ことがわかりました。
- 最近、育休取得率・取得人数が増加していることが判明。また、男性育児休業者と女性育児休業者もTableauで簡単に可視化できるため、傾向の把握が容易である。
- 特定の部署・職種で休職率が高い傾向がある
- 年度ごとに休職率の推移が変化している
3-2. 季節性や業界別傾向
- 休職率の月別推移 を可視化し、年度末など区切りの良い時期に増加傾向があることを確認。Tableauでは本部・氏名・入社年月日・役職などとともに、休職者の人数増減の推移を表示することが可能。
- 冬や年度末に休職が増える傾向。なぜこのような時季要因があるかを分析。
実際のデータでは、年度末や四半期末など区切りの良い時期に休職率が増加する傾向がありました。
これは、従業員が計画的に休暇を取得するケースや、異動・退職前の調整期間として休職を選択する場合があるためと考えられます。
また、私傷病休職については、特に冬季に増加する傾向が見られます。(ここは産業医に聴きましたが、冬季うつなどもあるようです)
4. 企業が取るべきアクション
4-1. 休職率のモニタリング
毎月の休職率をダッシュボードで可視化することで、休職傾向をリアルタイムで把握しやすくなります。
4-2. 休業の種類ごとの対応施策
休業の種類ごとに適切な施策を講じることが重要です。
以下に、それぞれの休業タイプに応じた具体的な対応策を整理しました。
育児休業
- 背景:育児休業の取得率は年々増加し、特に男性育児休業者が増加傾向にある。
- 施策:
- 育休中の業務の引き継ぎ計画を明確化
- 復職後の柔軟な勤務制度(時短勤務・リモートワーク)を導入
- 育児と仕事の両立を支援する社内プログラムの実施(相談窓口の設置など)
私傷病休職
- 背景:メンタルヘルスの影響が顕著。
- 施策:
- 産業医と連携し、休職データの共有と対策検討を強化
- メンタルヘルスケアプログラムを導入し、ストレスチェックを定期実施
- 入社直後の休職増加を防ぐため、採用時の適正確認を強化。入社直後の休職であれば、採用ミスマッチとなっている可能性が高いため、採用担当者と相談し、採用プロセスの見直しを検討する。
- 私傷病者の増加は、その組織の負担が大きいので、柔軟な人員配置を。
介護休暇
- 背景:高齢化に伴い、介護と仕事の両立を求める従業員が増加。
- 施策:
- フレックスタイムや在宅勤務制度を活用し、介護との両立を支援
- 介護支援のための社内相談窓口を設置
- 介護関連の福利厚生や補助制度を拡充
5. HRデータ分析の未来と活用
5-1. AIとデータ分析の進化
近年、HRデータ分析におけるAIの活用が急速に進んでいます。
特に、休職率の推移や異常値をAIが自動検出し、早期のリスク予測を可能にする技術が発展しています。
Tableauのデータをもとに、AIに「この推移を見て今後の休職率の傾向を予測してほしい」と依頼することで、より精度の高い予測分析が実現できます。
さらに、エンゲージメント指標と休職率データを組み合わせた相関分析を行うことで、職場環境や従業員のモチベーションが休職率に与える影響を明確にし、より適切なHR施策を立案できるようになります。
5-2. 提案資料の自動化と意思決定支援
HRデータ分析の結果をAIが自動的にレポート化し、パワーポイントやPDF形式の提案資料を自動生成する技術も進化しています。
例えば、Tableauのダッシュボードから「今月の休職率推移」「リスクの高い部署」「施策の提案」などをAIが文章化し、レポートとしてまとめることが可能です。
この自動化により、人事担当者はデータ整理やレポート作成にかかる時間を削減し、より戦略的な業務に集中できるようになります。
今後、AI技術のさらなる発展により、HRデータ分析がより高度化し、より精密な予測と意思決定支援が可能になると考えられます。
6. まとめ
データ分析を活用することで、休職率のトレンドを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。
Tableauを使えば、
- 無給休暇の分類と可視化
- 休職率の推移を毎月チェック
- HR戦略に活かすためのデータ提供
が簡単にできるため、ぜひHRデータ分析に活用してください!
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