【はじめに】共感と問題提起
私は人事制度の企画を担う部署でマネージャーをしています。
制度設計や企画立案といった“正解のない問い”に日々向き合いながら、より良い組織づくりを目指しています。
そんな中、どうしてもストレスを感じてしまうのが、「考えることを放棄しているように見えるマネージャー」の存在です。
「それって、どうすればいいんですか?」 「結局、何をすればいいんですか?」
同じ“マネージャー”という立場のはずなのに、会話が通じないと感じる瞬間があります。
特に、こちらが丁寧に背景や目的を説明しても、それをすっ飛ばして“結論だけ”を求めてくる。
問題が起きても、「何が何だか分からない」と思考を止める。
考えることを放棄したような態度に、正直、イライラしてしまうのです。
本記事では、そんな“指示待ちマネージャー”にどう向き合うかを、企画職マネージャーの視点から整理していきます。
【第1章】なぜ「指示待ちマネージャー」は生まれるのか?
「指示をください」「何をすれば?」と聞かれたとき、あなたはどう感じますか?
それが若手社員であれば、「分かりやすく指導しよう」と思えるかもしれません。
しかし、それが同じ“マネージャー”の立場から出てきた言葉だとしたら、強い違和感を覚えるのではないでしょうか。
こうした“指示待ちマネージャー”が生まれる背景には、いくつかの要因があります。
ひとつは、日常業務の忙しさです。
タスクに追われ、「とにかく処理しなければ」という思考が定着すると、考える余白が失われます。
さらに、組織によっては「決められた通りにやる」ことが評価される文化が根付いていることもあり、自ら考え、提案することに価値を感じづらくなっている場合もあります。
また、失敗を恐れる風土が強い職場では、「考えた結果、間違っていたらどうしよう」という不安から、判断を上司や他部署に委ねてしまうこともあります。
つまり、指示待ちの裏には、“責任回避”という心理的防衛も潜んでいるのです。
結果として、考えることよりも、指示に従って動くことが「無難な選択肢」となってしまっている。
こうした構造の中で、マネージャーであっても“自分の頭で考える”ことから遠ざかってしまうのです。
【第2章】「何が何だか…」と言う人に疲れてしまう理由
「何が何だか分からない」と口にする人に出会ったことはありませんか?
複雑な案件や新しい取り組みに直面したとき、最初は誰でも戸惑うものです。
でも、問題は“戸惑うこと”ではなく、“戸惑ったまま考えることをやめてしまう姿勢”にあります。
人事企画や制度設計のような仕事は、まさに「正解のない問い」に向き合う仕事です。
背景を読み取り、関係者の視点を想像し、最適なバランスを模索する。
だからこそ、複雑さや曖昧さを“整理しながら進める力”が求められます。
一方で、隣の部署のマネージャーが、「よく分からないですね」と話を打ち切ってしまう。
さらには「で、結局どうしたらいいんですか?」と判断をこちらに委ねてくる。
これでは、本来“共に考える”はずの相手が“判断を丸投げする存在”になってしまい、結果としてすべての思考と決断がこちらに集中してしまいます。
それが一度きりであればまだいい。
けれど、毎回そうなると、「またか」「こっちばかりが考えているが、本来はあなたが考えるべき・・・」と無力感が募ってきます。
思考の責任を共有してほしいのに、いつの間にか“思考の片務性”が生まれているのです。
【第3章】優しさが生む「思考の片務性」
こちらが「一緒に考えてほしい」と言っているのに、相手は「結論を教えてください」と言ってくる。
あまりにも進まないので、こちらが状況を分解し、論点を整理し、懸念点まで代わりに洗い出す。
そうやって前に進めてきた経験、ありませんか?
きっとありますよね。
相手が忙しいのは分かる。 混乱しているのも分かる。 だから手伝う。
でも、それを繰り返していると、相手は「考えなくても進めてもらえる」と学習してしまいます。
本来マネージャーが担うべき“思考と判断”の責任を、こちらが一方的に背負わされていく。
これは優しさの裏返しです。 相手を思って動いた結果、かえって「考えないことが当たり前」になってしまう。
まさに“思考の片務性”。
企画側が考え、整理し、判断するばかりの構造が、知らぬ間に固定化していくのです。
この片務性から抜け出さない限り、相手は自走せず、あなたの疲弊は続いていきます。
【第4章】指示待ちマネージャーへの向き合い方
では、どうすればこの関係性を変えられるのでしょうか。
ポイントは「役割の線引き」と「考える余地を相手に返すこと」です。
✔ 「線引き」を明確にする
まずは、“どこまでがこちらの役割で、どこからが相手の責任なのか”を明確にしましょう。
たとえば「こちらでは方向性を示しましたが、運用面での具体的な懸念や課題は〇〇チーム側で洗い出していただけますか?」と伝えることで、ボールを相手に戻すことができます。
「一緒に考えますよ」とは言っても、「全部やります」とは違う。
この線引きを、やんわりと、でもはっきり伝えることが、依存の構造を断ち切る第一歩です。
✔ “考えるフレーム”だけ渡して委ねる
次に有効なのは、論点を整理する「型」だけ用意し、思考の余白は相手に任せることです。
たとえば、課題整理シートを用意し、「この中で気になる項目にチェックをお願いします」と依頼するだけでも、相手に考えるきっかけを渡せます。
フレームだけ渡し、埋めるのは相手。
考える力を取り戻してもらうには、こちらが“ヒントは出すが、答えは渡さない”姿勢が大切です。
✔ 自分のスタンスを守る
最後に、自分自身の立場を守ることも忘れてはいけません。
優しさから支援するのは素晴らしい。 でも、それによってあなたの本来の仕事が後回しになってしまっては、本末転倒です。
「私は一緒に考えることはできます。 でも、あなたの業務の責任までは肩代わりできません」
そう言える勇気が、自分を守り、相手を育てる力にもなるのです。
【まとめ】
“考えることを放棄する人”にストレスを感じるのは、自分が真剣に向き合っている証拠です。
思考の責任は共有すべきであり、全部を背負う必要はありません。
指示待ちマネージャーとの関係には、役割の線引きと対話が必要です。
私たちは、“決まったことをこなす人”ではなく、“決まっていないことを形にする人”でありたい。
考えることに価値を置くあなたの姿勢は、組織にとって必要不可欠なものです。
だからこそ、考える力を奪われず、疲弊しないための“距離感”がとても大切なのです。
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